1. 40年前のインスピレーション

僕がこのメソッドのインスピレーションと遭遇したのは、もう40年も前のことになります。

新入社員だった僕は、超満員の通勤電車にうんざりしていました。
そこで発売したての初代ウォークマンを使って、英会話のテープ学習に取り組むことにしました。

リスニング用のテープを数ヶ月聞くうちに、ネイティブの音声がかなり聞き取れるようになってきました。

と同時に、ある疑問が湧いてきました。
「英単語は聞き取れているのに、文意を把握できないのはなぜだろう?

単語はそこそこ聞き取れているのに、肝心の文意がなかなか伝わってこなかったのです。
文意を把握するためには、一度テープを止めて頭の中で聞き取った英文を反芻する必要がありました。

2. 英語は文頭型の言語

やがて、日本語と英語のある根本的な違いに気が付きました。

英語では文の冒頭に論理的な要素が集積しています。
もしその部分を聞き逃したら、文意を把握できません。

例えば、"I will catch a taxi on the street."「道でタクシーを捕まえるさ。」の文頭部分、"I will"を聞き逃したとします。
すると、いくら" catch a taxi on the street." が聞き取れたとしても、意味を成しません。

もし文頭が"Did you"で始まっていたら、"Did you catch a taxi on the street?"「道でタクシーを捕まえたの?」という意味になります。
これではまったく文意が変わってしまいます。

だから英語の文意を把握しようとしたら、文頭を聞き取ることが必須なのです。

3. 日本語は文尾型 の言語

ところが日本語は文尾に論理が集積しています。

「道でタクシーを捕まえるさ。」
「道でタクシーを捕まえたの?」

これら二つの文章では、「道でタクシーを捕まえ」までは共通です。
しかし文尾の二文字が「るさ。」から「たの?」へと変わると、論理構造が全く変わってしまいます。

前者の文尾「るさ。」からは「肯定文」「未来形」と分かります。
後者の文尾「たの?」からは「疑問文」「過去形」と分かります。

主語は一見省略されています。
しかし日本語で主語が省略された場合、肯定文の場合は「一人称」、疑問文の場合は「二人称」と判断されるのが普通です。

したがって前者では「肯定文」と分かった直後に、主語は「一人称」と判断されます。
後者では「疑問文」と分かったあとに、「二人称」と判断されます。

結果として、前者は「肯定文」「一人称」「未来形」、後者は「疑問文」「二人称」「過去形」となります。
これらの決定箇所は「るさ。」「たの?」で、いずれも文尾です。

このように日本語は、文尾で論理構造を決定する言語なのです。

4. 英会話には「文尾脳⇒文頭脳」への変換が必要

英語は"I will" "Did you" のように、文頭で論理構造を決定する文頭型言語です。
一方、日本語は論理構造を文尾で決定する 文尾型言語です。

英語  = 文頭型言語
日本語 = 文尾型言語


ということは、それに対応して脳の構造も、 英語脳は文頭で論理演算を行う文頭脳 で、日本語脳は文尾で論理演算を行う文尾脳であるに違いない。
そう考えました。

英語脳  = 文頭脳
日本語脳 = 文尾脳

すると、日本人の僕が英語のテープを聞いているときは、文尾脳で文頭型言語を聞いていることになります。
脳が論理演算を行う場所(文尾)と、言語の論理が集積している場所(文頭)がずれているのです。
ということは、日本人は文尾脳を文頭脳へ変換しないと、英語を聞くことも話すこともできないのではないでしょうか。

5. 40年かけて 3Key Training® を完成

このときのインスピーレーションがずっと頭の中に居座り続け、離れることはありませんでした。
そこで2000年に会社を退職したのち、このインスピレーションの実現に取り組みました。

そして2015年に完成し、3Key Training® と名付けました。
特許も取得しました。

インスピレーションと遭遇してから、40年近い歳月が流れていました。
40年前にはパソコンも存在していませんでしたが、いまやスマートホンの全盛期です。

当初はリスニングメソッドとして開発に着手しましたが、完成してみるとスピーキングメソッドへと変貌を遂げていました。
100人近い受講生にこのメソッドを試したところ、予想通りの、いやそれ以上の効果を発揮することが分かりました。

3Key Training® は日本人の脳を「文尾脳から文頭脳」へと素早く変換し、スピーキング能力を効率的に向上させる画期的な方法であることが分かりました。

有限会社レシプロ社長
林一紀